生命力の躍動を回復させるには

心身ともに健やかに生きるためには、心・からだ・魂まるごと全体が調和する方向に働く力に自然に身を委ねることです。

不調が起きたとき、症状が表れているその部分だけを手当てするばかりではなく、生命力の躍動を呼び覚ますためにできることが他にもあるはず。それを見つけるためのホリスティックな健康観についてです。

もくじ

自然は常に安定に向かう

唐突ですが、宇宙を想像してみます。。

私たちのいる地球は自ら回転し、太陽と一定の距離を保ちながらその周りを周っています。軌道を大きく外れることなく、地軸を少し傾けながら、地球は安定性を保っています。

その軌道や傾きの角度はいつもぴったりに固定されているわけではなく、膨大な時間の流れの中で絶妙なバランスの一点を探るように常に変化しているようです。

“地球は一つの大きな生命体である”

これは生物物理学者のジェームズ・ラブロック博士の唱えたガイア理論の基本概念です。

たとえば地球の大気の酸素濃度や温度に変動はあれど、長い目でみると生命体が存続できる状態に維持しようとする力が常に働いています。まるで地球全体が一つの生き物のように。

気候変動も、火山噴火も、地震も、いわば地球にとっての自己調整。あらゆる生命が複雑に関係し合いながら、ガイア(地球)は生き物として今も生き続けています。

少しスケールを小さくして、森林はどうでしょうか。植物や動物や昆虫など全ての生き物が互いに影響し合い、生態系のバランスを保っています。

食う・食われるの関係で個体数が変化するように、安定した状態に常に向かって全ての生き物たちは活動しています。

言うまでもなく、光、水、土、空気など自然を構成するあらゆる要素の関係性によって、森もやはり生きています。

宇宙の目で地球を、地球の目を森を見てみると、見かけ上は静かで動きのないものに見えるかもしれません。けれども全ての生命体は、常に安定した状態に向かってダイナミックに活動しています。そうして脈々といのちをつないでいるのです。

内なる生命力を信じる

では私たち人間はどうでしょうか。

「下なるものは上なるもののごとく、上なるものは下なるもののごとし」

という言葉があります。マクロコスモス(大宇宙)とミクロコスモス(小宇宙=人間)は互いに照らし合い応じ合っているという意味です。

私たち人間も、宇宙の、自然の法則のなかで生きている躍動的な生命体。

睡眠と覚醒、交感神経と副交感神経、赤血球と白血球・・想像を絶するような数の要素がたゆまなく変化を繰り返し、からだを一定の状態を保とうとしています。

たとえば軽い擦り傷をしたとき、放っておいてもみるみるうちに皮膚が修復されていくのは驚くべきことです。

身体面のみならず、感情面、精神面にも波があるのはもちろんのこと。どんなに大きな波が起きても、穏やかで静かな海に戻る時が必ずやってきます。感情の荒波がずっと留まり続けることはありません。

確かに私たちの内側にも「釣り合いをとることのできる一点に向かう力」が働いています。天秤が釣り合いをとるように、バランスのとれた状態を保つためにお互いの関係性を保ちながら常に揺らいでいるのです。

私たちはその自然の摂理にある「生命の力」に、もっと自信を持ってもいいのではないでしょうか。

ホリスティック(全体論的)な生き方

ところで、健康についてWHO:世界保健機関では次のような定義が提案されています。

Health is a dynamic state of complete physical, mental, spiritual and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.

(健康とは肉体的にも、精神的にも、霊的にも、そして社会的にも、全てが躍動的に満たされた状態であり、単に病気でないとか弱っていないということではない。)

身体、感情、精神、観念、家族関係、人間関係、社会的活動など、その人のあらゆること。そして環境、地球、宇宙を含めて、全てのつながりを感じること。

つまり身体的、精神的、霊的にも、そして社会的、環境的、宇宙的にも、全てがつながり調和した状態が健康であるということになります。

しかし、生まれてから死ぬまでこのように完全無欠な人はいますでしょうか。。むしろ私たちは不完全を体験するために生きているとさえ感じます。

病気にならないことはもちろんですが、病気になっても回復する力を養うことこそ人生全体での健康には大切です。

そして病気であっても、人生という物語全体として調和し、魂を成長させ、健やかに病む。

身体的、精神的な弱さがあっても、いのちの喜びを持って生きる。

このような意識を持つことが、人生全体として健やかな生き方だと思います。

病、弱さ、老い、苦しみという人間が味わうネガティブさも含め、全てが調和へ向かう力に身を委ねて「より良く生きる」こと。それが自然と調和するホリスティックな生き方です。

健康とは全体であり、バランスである

健康とは、心・からだ・魂という人間まるごとが一つであるという視点で観るとき、全体が安定した状態に向かい、生命力が躍動している状態です。

私たち人間は、森羅万象のつながりと響き合いのなかで生きているという事実。生命力を呼び覚ますきっかけは、全ての結び合いの中に存在し、全てと一体となっている自分自身を感じることにあります。

このようなホリスティックな観点を持つと、自分の内的バランス、そして自分の外的な世界とのつながりを調整することに目が向くようになります。

すると心身ともに健やかに生きるために何を手入れするべきか、視野が広がることでしょう。

そしてもし不調が起きたとき、その部分的なケアだけでは事足りないことを知るはずです。そして完全なるバランスを取り戻すための答えの在りかを見つけることができるのです。

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