心にストレスを感じるときのセルフケア「植物療法ネットワーク・ケーススタディ」レポート

先日、日本ホリスティック医学協会主催の特別企画「ケーススタディから考える植物療法によるホリスティックなアプローチ」が開催されました。

メディカルハーブ、アロマセラピー、フラワーエッセンス療法、園芸療法、森林療法など、植物療法の各分野で活動する人たちが都内に集結。あるクライアントの心身の不調のケース例をとりあげ、統合的な視点と各種のアプローチ方法を共有し合うというものです。

メディカルハーブ、アロマセラピー、フラワーエッセンスを中心に、それぞれの専門家の代表者から述べられた見解を大まかにまとめました。最後にその補足として私からの提案も付け加えています。植物療法のホリスティック(全体的)なケアについてのイメージを解説したいと思います。

もくじ

ケース : H・Mさん(40代女性)

今回は以下のようなケース例に対応する場合について検討されました。

・2人の子ども(小学生、幼児)の母
・フルタイムで働いていて、朝から晩までとにかく忙しい
・毎日が慌ただしく、自分の時間が持てない
・子どもの言動にすぐ怒ってしまう
・夫は協力的だが、夫婦のコミニュケーションが少ないと感じる
・イライラと、急な不安感
・肩こり、腰痛、疲労、生理不順

心理的なケアの必要性(医学的な視点)

この方はストレス度合いのかなり高い状態にあります。

肉体的な疲労だけでなく、精神的な疲労をケアもしていく必要があります。肩こり・腰痛のような身体的な痛みや、ホルモンバランスの不調には心理的な原因の可能性が大いにあるからです。

また不安感や怒りの感情はうつの初期症状の場合もあるので、もし慢性的になっているならば軽く見過ごしてはなりません。

ストレスの緩和にハーブティーを

(写真はイメージです)

まずは質の高い睡眠が大切。

ストレスを和らげる効果のあるハーブティーが良いでしょう。例えば、お休み前にジャーマンカモミールのお茶を飲むこと。ジャーマンカモミールには様々な作用がありますが、鎮静作用や抗不安作用など心を休めたい時に最も選ばれるハーブの一つです。

また、エゾウコギ(シベリアニンジン)のハーブティーも有効です。ストレスに適応する力を全体的に増強します。

ご主人と一緒にティータイムを楽しむのもコミニュケーションの機会としても提案したいところです。ハーブは成分による薬理的作用だけでなく、ハーブティーならば「誰とどんな風に飲むのか」という環境も効果に大きく影響します。

生活リズムを整えるためのアロマセラピー

忙しさに振り回されていると感じるとき、まずは生活リズムを作ることが大切です。

たとえばモミなどの樹木の香りを、毎日の帰宅時にお部屋に芳香させることを習慣づけると良いです。何十年と生きる木々のどっしりとしたエネルギーを充満させたり、イライラから気持ちを切り替えることに期待できます。

他には、「自分のための時間」としてアロマバスもおすすめです。ローズやネロリなどの花の精油は内分泌系や自律神経系に働きかけるので、リラックスのみならず生理不順のトラブルによいと考えられます。

心の平静を取り戻すためのフラワーエッセンス(バッチフラワーレメディ)

ストレスマネジメントとして活用できるのがフラワーエッセンスです。

様々なフラワーエッセンスの中でも、世界で最もポピュラーなのが「バッチフラワーレメディ」。花が持つエネルギー的な情報によって、心の調和を整える植物療法です。

イライラして気持ちが急いてしまう時にはインパチェンスを。心の疲労感にはオリーブが適しています。ご主人に対して怒りの気持ちがあるのならホリーを、あるいは自分に関心を向けることを相手に要求しすぎているならばチコリーがふさわしいでしょう。

チコリーは子どもに自分の言うことを聞かせようと支配的になっているときにも当てはまります。

提案できるレメディはこの限りではありません。性格や非言語的な部分など、その人がどんな人物なのかを含めて適したレメディを選んでいきます。数種類ブレンドしたものを少しずつ飲用します。

自己、他者とのコミュニケーション(園芸を楽しむ、森に入る)

ルッコラやバジルなど、家族で一緒に植物を育てること。何より会話やコミニュケーションの機会になります。植物の成長を見守ることは心の充足感を得られ、自己肯定感を高めます。

あるいは、森の中でゆっくり過ごし自分の心の奥底の声を聴くこと。家族とではなく、一人きりになる時間こそ必要と思われます。一度立ち止まって自己と対話してみることです。

すると本当に大切なものに改めて気づくことができるでしょう。

【各分野の代表者】
西洋医学・ホリスティック医学—赤坂溜池クリニック院長 降谷英成氏
メディカルハーブ—メディカルハーブ協会副理事長 林真一郎氏
アロマセラピー—アロマセラピスト 薬学博士 村上志緒氏
バッチフラワーレメディ(フラワーエッセンス)—バッチホリスティック研究会代表 林サヲダ氏
園芸療法—園芸療法士 宍戸多恵子氏
森林療法—日本森林療法協会 森林セルフケアサポーター 飯田みゆき氏

深呼吸や、子どもとのスキンシップも

5人の方々の意見交換を聴きながら、補足として私からも提案したいと思います。

まず、忙しさによるストレス環境では呼吸が浅くなっている可能性が高いです。

呼吸が浅いと代謝が低下し治癒系の力も低下してしまいます。起床時に、5分間でもよいので深呼吸をゆっくり繰り返すこと。そのときサンダルウッドやフランキンセンスなどの樹木系の精油を使えばさらに効果的です。(もちろんその他の好きな香りでも良いです。)

深い呼吸に集中することは、神経系に良い影響をもたらすだけでなく、思考の堂々巡りから注意をそらすことができます。

また母親の視点でのアプローチとして、一人でのリラックス時間以外に、子どもとのスキンシップをとることを提案します。

たとえば就寝前や休日などに、子どもの足をマッサージすることです。ローマンカモミールやラベンダーの芳香浴をしながらか、あるいはマッサージオイルに精油を微量に加えればなお良いです。

時間にも心にも余裕がないときというのは、「〜しなければならない」という義務感に追われ、周りが見えにくくなってしまうものです。子育てを義務的にこなすという意識から少し離れて、共に生き共に成長する喜びを分かち合う。そんな母性に改めて気づくことができるでしょう。

人は繊細な生きものであり、感じる生きものである

人間を心・からだ・スピリットの丸ごと全体ととらえるとき、スピリット(精神性、霊性)の部分についても取り組まなければなりません。

ここでは、スピリットの部分に関する具体的なケアという形では提案はされていませんが、特にバッチフラワーレメディや森林療法はそれに関わるセルフケアであると言えます。

もちろんハーブや精油がスピリットには影響を与えないということではありません。目に見えない部分にも作用を及ぼすであろう、というのは各専門家とも同じく私も同意見です。

ハーブに含まれる植物化学成分の薬理的な効用のみならず、それ以上のものはやはり確かにあるのではないかということです。

植物が人間に及ぼす影響に境界線などないのです。いろいろな微細な力が混ざり合うからこその、植物療法なのです。

五感を研ぎ澄ませ、感じる力を養うこと。 それが真の自分を思い出し、健やかな心持ちで毎日を生きていくための鍵となります。

植物療法が人間の繊細な感覚を鋭敏にするための一つのツールとして、多くの人のお役に立てますように。

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