発達特性(発達障害)のある人の家族のためのホリスティックケア チーム医療の実践 

発達特性のある人と暮らすなかで、コミュニケーションの難しさや言葉にできない孤独感を抱える人が多くいます。

私自身、セラピストとして人を支える立場でありながら、発達特性のある人の家族としても同じ課題に向き合ってきました。

今回、日本ホリスティック医学協会のチーム医療による発達障害に関わる取り組みに、私はクライアントの一人として参加する機会をいただきました。そして、チーム主催の報告会にはセラピストの目線で聴講させていただきました。

発達特性に関わるクライアントとセラピストの両方の視点から得た経験は、私にとって大きな気づきと転換点になりました。

困難のなかにあっても本来の自分自身を取り戻して生きていきたいと願う方へ向けて、私の体験と学びをお届けしたいと思います。

発達特性(発達障害)と家族が抱えるもの

発達特性は、生まれつきの脳の機能によるものです。行動、感覚、認知に特有の傾向があり、医学的には「発達障害(神経発達症)」として以下の代表的な診断があります。


・自閉スペクトラム障害(ASD : Autism Spectrum Disorder)
コミュニケーションのスタイルに個性があり、情緒的な共有がしにくいことによる対人関係の難しさが特徴です。特定の分野、一定のルールを好む傾向があります。知的発達の遅れが目立たない「アスペルガー症候群」も含まれます。

・注意欠陥・多動性障害(ADHD : Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder)
注意の向け方や行動のテンポが個性的で、興味のあることへの集中力は高いが、複数のことを順序立てて進めることが苦手な場合があります。

・限局性学習障害(SLD / LD : Specific Learning Disorder)
知的能力は平均的ですが、読み書きや計算など特定の学習スキルに困難を感じることがあります。


これらを単独で持つ場合もあれば、いくつかを組み合わせて持つ場合も多いです。また、同じ診断でも特性の表れ方が個人によって大きく異なるのが特徴です。

現在の西洋医学において、発達障害は脳機能の特性であるため根本的な治療は難しいとされますが、投薬による対症療法(主にADHDに処方)やコミュニケーション能力向上のための支援がおこなわれています。

その一方で、当事者のパートナーや家族が抱える精神的な負担は見過ごされがちです。コミュニケーションの難しさ、生活上の困り感は日常的にあるけれど、それが軽減されている実感が持てないというのが多くの家族の現実です。

特にASDの特性は多様で、グレーゾーンと呼ばれるように特性の濃淡には個人差があります。そのため家族の中で生じる困難はとても個別性が高く、当事者や家族が感じる戸惑いや負担もさまざまです。

当事者本人が自覚しにくいケースも多くあります。そのため医療や福祉の支援が家族の細やかな困りごとまで行き届きにくいのが現状です。

互いの意思疎通が難しい場面が増えるにつれ、パートナーや家族の心理的・精神的な疲労感は気づかないうちに徐々に蓄積されていきます。そしてそれが心の不均衡、身体の不定愁訴として現れてくることがあるのです。

ホリスティックケアのための家族会

ここでホリスティック医療について簡単に触れたいと思います。

ホリスティック医療とは、人を心・からだ・霊性の統合された存在としてとらえ、その全体性に働きかけながら、より良く生きるための医療です。

症状だけを取り除こうとするのではなく、その人の生き方、人間関係、社会的な環境までを含めた健康を支えていくためのアプローチをしていきます。

西洋医学が「病気を診る」医療だとすれば、ホリスティック医療は「人を診る」医療といえます。

そのホリスティックな理念に基づき、発達特性のある人とその家族のケアのための医療チームが立ち上がりました。4名の各種セラピストと2名の医師によりモニタープログラムが設けられ、今回初めて実施されました。

主な内容は、オンラインでの家族会と各種セラピーの提供の2本柱で構成されます。必要に応じて医療を受診することも可能です。

家族会は当事者の家族にとって生活上の困りごとを相談できる場です。批判や否定のない空気感のなか、セラピストに安心して話をじっくり聞いてもらえます。同じような経験を持つセラピストから情報やアドバイスも得られます。

また、「ホリスティックヘルス塾」という勉強会も開催されました。当事者も家族も自分らしく心地よく生きるために、それぞれの「健康(ウェルビーイング)」を大切にするという学び合いがなされました。

人は困難に直面すると、最初は「自分だけが苦しい」と孤独になりやすいものです。そんなとき同じような体験を共有しあうことだけでも、心がとても軽くなるのです。

参加者の多くは「自分だけじゃないんだ」と孤立感を和らげることができました。家族会は発達特性のある人の家族にとって社会的なつながりであり、サポートを受けられる場があるという安心感を生み出しました。

バッチフラワーレメディとリフレクソロジーの実践と効果

ホリスティックケアの現場で提供されたセラピーとして、「バッチフラワーレメディ」と「リフレクソロジー」が実践されました。

「バッチフラワーレメディ」は、花のエネルギー的な情報によって感情や精神を整えるセラピーです。対面のコンサルテーションでクライアントの感情の状態に合わせたフラワーレメディが選択され、それを少しずつ摂取することで心のバランスを調整していきます。

「リフレクソロジー」は、足裏の反射区を指で刺激し、自然治癒力を活性化させる身体的なアプローチのセラピーです。30〜60分の施術によって心身のストレス軽減やリラクゼーションがもたらされます。

アンケート結果では、「気持ちがリラックスできた」「からだが軽くなった」という声が多く、特に両方の施術を受けた方々に大きな心理的な変化がありました。

その結果から、多くの参加者は背負いすぎていた心の重荷を軽減することができたと言えます。言語的、非言語的なアプローチによって感情の波を和らげながら心を緩め、体調の回復を促すことができたのです。

それは心の余裕につながり、発達特性のとらえ方やコミュニケーションの仕方に変化を起こしました。家族の心理的・身体的な回復によって、当事者や他の家族メンバーとのコミュニケーションも良好になるなど、ポジティブな影響を与えました。

他者に向いていた意識が、自己の在り方へと戻るとき

一般的にコミュニケーションのスタイルには個人差があり、感情に寄り添うことを大切にする人もいれば、問題解決を重視する人もいます。

パートナーシップにおいて、ASD傾向が強い人(男性が多い)が相手の感情の読み取りが難しいことなどから、コミュニケーションの行き違いが起きてしまうことがあります。

もちろんASDの人は悪意を持っているわけではありません。ただ、何がすれ違いを生んでいるのかを自覚することが難しく戸惑いの中にいます。

一方、パートナーが共感性や感受性の高い場合、さまざまな感情の機微の共有感を得られないことに苦痛を感じます。誰もが人間として持つ孤独感とはまた別の、自己喪失感のような孤独に陥ってしまうのです。

その積み重ねの中で、知らず知らずのうちに自分の感情を抑え込み、自分を否定したり責めたりしながら、誰にも共有できない思いを抱えてしまうことがあるのです。

私自身もそのような経験をしてきました。夫とのコミュニケーションのすれ違いがASD特性によるものだと気づくまでに長い時間がかかりました。

一緒にいるのに、一人だと感じる瞬間。体調が悪いとき、声をかけてもらえないまま時間が過ぎていく。あたたかな食事をつくっても、日々小さな感謝を伝えても、同じ温度感で返ってこないことへの虚無感。子育ての迷いや不安のなか、葛藤と決断はいつも私の担当。衝動的な言動に振り回される。食器を洗いながら、誰にも言えない気持ちが溢れて泣いたことが過去に何度かありました。

また私はセラピストとして人を支援する立場であることもあり、自分の弱さを人に見せることにどこかで制限をかけていたのかもしれません。それは医療職、看護職、介護職など、誰かをサポートする立場の人に生じやすい心理的疲労感とも重なります。

私は妻や母という役割の責任感や家族関係への気遣いと、セラピストの意識が合わさることで、自分の本当の感情を後回しにしてしまっていたのだと思います。

そんなとき、深い共感と理解を示してくれるセラピストの方々とご縁をいただき、このモニタープログラムにクライアントとして参加することができました。あたたかいサポートを受けられる場があるという安心感が、何より私の心の支えになりました。

発達特性への理解が深まると、その見方が少しずつ変わってきます。そして、それまでは「家族のために」と他者に向かっていた意識が、「自分はどう在りたいのか」という自己に向かった問いに向き合えるようになっていくのです。

相手がどうであれ、まずは自分自身を大切にすること。セルフケアを重ねて自分の小さな幸せを日々満たしていく。重いと感じていたのは他者の荷物で、それは自分が持たなくてもいいものでした。

自身の内面が変化すると、相手の良い面が再び見えるようになり、関係性は穏やかなものに変わっていきました。

病や障害というと一見否定的に捉えがちですが、それを忌み嫌うのではなく、「これは私に何を教えてくれているのか」という奥深い意味を知ろうとする姿勢に移行することがとても重要だと思います。

それがまさにホリスティックな視座をもったレジリエンスになるからです。レジリエンスとは、どんな困難に直面してもしなやかに回復し乗り越えていく力のことです。

このクライアントとしての経験があったからこそ、私には同じような課題を抱えているお一人おひとりに、心からの共感を持って寄り添える。私はその確信を胸に今後のセラピストの活動に向かっていくことを決意しました。

ホリスティックケアの需要と私の活動意義

西洋医学であつかわれる発達障害は根本的な治癒のための手立てが成立しにくい領域で、かつ現在の医療体制では家族のケアまで手が回る余地はほぼ無いのが現実です。

発達特性は先天的なものであることがほとんどで、その人の責任ではありません。けれども当事者も共に暮らす家族も、コミュニケーションの難しさが様々な場面で実際に生じます。そして両者ともに困りごとは一人ひとり異なり、一律の支援では届かないことがほとんどです。

発達特性のある人、そしてともに暮らす家族に必要とされる心理的なケアの需要は、決して少なくないと感じます。けれどもその繊細なニーズに応えられる場はまだ充分だとは言えない状況です。

だからこそ、診断や症状だけに囚われず、心もからだも生き方も家族の関係性も含めた、その人丸ごとに寄り添うことのできる丁寧なホリスティックケアが求められるのではないかと思います。

「一人で抱え込まないで、少しずつ一緒にやっていきましょうね」

チームの皆さまが私に与えてくださったやさしさを、今度は私からケアを必要とする方へつなげていきたい。その想いを大切にしながら、これからもお一人ひとりに丁寧なホリスティックなセラピーをお届けしたいと思います。

当チーム医療は継続予定とのこと、お問い合わせやご相談がありましたら当サイトのフォームよりお気軽にお問い合わせください。ネットワークをおつなぎいたします。

【赤坂溜池統合医療チーム】
■セラピスト
山田智子さん
薬剤師 日本ホリスティック医学協会認定療法士 ホリスティックヘルス塾インストラクター 英国バッチ財団登録プラクティショナー

荻野 麻里さん
リフレクソロジスト 日本ホリスティック医学協会認定療法士 セラピールームSole to Soul Studio 主宰

岩佐 尚子さん
アロマセラピスト ホリスティックヘルス塾インストラクター 
親の会ビリーブ(不登校、発達障害、引きこもり等の子供を持つ親の会)世話人

本部 順和さん
アロマセラピスト ホリスティックヘルス塾インストラクター 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー

■医師
降谷英也先生 
赤坂溜池クリニック院長

高橋信雄先生
高橋ファミリークリニック院長

日本ホリスティック医学協会
https://www.holistic-medicine.or.jp/

※この記事の公開にあたり、パートナーの了承を得ています。

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